骨を再生させインプラントを入れた症例

●歯を抜くと骨が無くなる




50歳代の女性です。右の奥歯が度々腫れて出血するとのことで、来院されました。レントゲン写真をご覧ください。写真の中央にある歯が問題の奥歯です。残念ながら、抜歯しなければなりません。そして、患者さんは抜歯後インプラントを希望されていました。(黄色の太いラインは神経の通っている管です。)

しかし、このまま抜歯したらどうなるか。既に、骨が無くなっていますので、インプラントを入れるのに十分な量の骨が見込めません。そこで、抜歯前にひと工夫して骨を再生することにしました。

●健全な歯の根の周囲には骨が再生する

人間の体は実に良く出来ていて、失われたものを再生する能力があります。歯の根にある歯根膜と呼ばれる組織が健全であれば、その周りに骨が再生されます。この仕組みをうまく使ったのが、歯牙移植であり、歯科矯正なのです。

人間の体は、不要なものを体の外に出そうとします。歯の根に汚れがついていれば、歯の根を外に出そうとします。その原理を利用すると、歯を削って歯の根に力がかからないようにしておけば、自然と歯の根の汚れた部分が外に出てきてくれます。そして、それに引っ張られるように健全な部分の下に骨が再生されます。(ちょっとイメージしにくいですね。)これを、自然挺出と呼んでいます。

自然挺出が止まるると、少し歯の根がしっかりしてきます。その後、矯正用のゴムを使ってさらに歯の根を引っ張り出します。

実は、歯を矯正で引っ張り出すだけで十分な骨の再生が見込めれば良かったのですが、引っ張り出しをするアンカー(錨の役目をする歯)から遠く、うまく力をかけられなかったため、途中で断念して抜歯を行いました。抜歯した後なるべく骨が再生するように、さらに非吸収性の膜を入れたり、PRGF(成長因子)を入れたりして、骨の再生に努力しました。

矯正による引っぱり出しが非常に功を奏したケースは、「歯を引っ張り出して歯茎を作った症例」をご覧ください。

そして、インプラントを入れた時の写真がこれです。苦労の甲斐あって、今回歯を抜いたところの骨は十分にありました。しかし、既に抜いてあった部位の骨の厚みが足りなかったため、人工骨を使った骨移植を行っています。(写真向かって右側のインプラントに人工骨移植)

術前と術後の写真を重ね合わせたものです。骨が再生していることがお分かり頂けると思います。

実は、骨の再生には難易度があります。インプラントの太さに影響する骨の幅を増やすのは比較的易しいのですが、インプラントの長さに影響する骨の高さを増やすことは、非常に難しいのです。今回、その難しい垂直的な骨の再生を手術すること無く行えたことは、患者さんにとってとてもメリットのあることではないかと思います。

もし、インプラントをお考えであれば、歯を抜く前から戦略的な治療計画を立案することがとても大切になってきます。

症例一覧にもどる

まずは、お気軽にお口のお悩みをご相談ください。